JR総連発第11号
2005年5月11日

国 土 交 通 大 臣  北 側   一 雄 殿
航空・鉄道事故調査委員会 委員長 佐藤 淳造 殿

全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)
     執行委員長  小 田 裕 司

JR西日本・福知山線脱線事故に関する要請

 日頃の交通運輸行政並びに当組合に対するご指導・ご鞭撻に感謝を申し上げます。
 私たちは、当組合結成以来、鉄道事故の根絶をめざして活動して参りましたが、4月25日に発生したJR西日本・福知山線脱線事故については、極めて痛恨の念をもって受け止めております。亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、負傷された方々、被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。
 今回の事故原因につきましては貴航空・鉄道事故調査委員会などにおいて究明されていくことと思われますが、現在、曲線での速度超過が主たる要因として報道されています。しかし、これを単なる運転士個人の問題や、運転保安設備の遅れという問題で済ますわけにはいきません。何故、運転士は列車の遅延を回復するために、無理な回復運転をせざるを得なかったのか、定時運転を至上命題とする運行優先の企業体質や「日勤教育」に象徴される社員管理など、事故の背後要因にもメスを入れていかなければならないと考えます。
 私たちはこれまでJR西日本の「運行優先・営利優先」の経営姿勢と安全軽視の企業体質を批判しその改善を求めてきました。しかしながら、JR西日本の経営陣は私たちの声に聞く耳を持たず、そのことが今回の事故の遠因になっていることを考えると極めて残念でなりません。過去の信楽高原鉄道事故や救急隊員触車死亡事故、さらには服部匡起さん損害賠償請求裁判などを真摯に反省し教訓化していれば、今回の事故は防ぐことができたと考えています。私たちはJR西日本における「安全第一」の企業風土を確立する立場から、あらためて今回の事故の背後要因などについて十分に究明され、なぜこのような悲惨な事故が起きざるをえなかったのか、その本質を明らかにされるよう要請いたします。
 私たちは、これまでの多くの鉄道事故の経験から、事故が引き起こされた技術的メカニズムの解明にとどまらず、事故が生起せざるを得なかった人的・組織的・社会的・制度的な諸要因についても究明すべきであると考えております。そのことから教訓を引き出すことが、今後の真の再発防止対策を講じていくことにつながると信じております。
 そのような観点から、下記の事項について要請いたします。

1.事故調査に関する適宜の情報開示と検討結果の公表

2.徹底的な原因調査
  技術的要因のみならず、人的・組織的・社会的・制度的などの諸要因についても究 明することを要請します。
 (1) 制限速度ぎりぎりの運行優先ダイヤ
 (2) 「ダウンタイムの短縮」と称した「回復運転」の強要
 (3) 「日勤教育」・処分・管理者による脅し等の不当な労務管理
 (4) 「安全綱領」の改悪や保安設備に対する投資の軽視などの経営姿勢
 (5) 不当な労務政策や現場の声を封殺する上意下達の官僚体質

3.関係する社員や労働組合からの意見聴取

以  上

戻る