No.2

労働組合への弾圧と闘うのは世界の常識

 国際自由労連(ICFTU)のウェブサイトにある「労働組合の権利」のページには次のように書かれています。

  • 毎年100人から数百人の間の労働組合員が殺されています。

  • 数千人以上が投獄され、デモの中で殴られ、治安警察などから拷問を受け、長期の刑期を宣告されています。

  • 毎年、数十万人の労働者がただ労働組合をつくろうとしたというだけの理由で職を奪われています。

  • 世界中で数百万の労働者が女性や子どもを含め意志に反して働くことを強制されています。

  • 多くの国で、労働者は政治的、人種的、宗教的その他の理由で差別されています。国際自由労連はこのような状況を生んだ政府や使用者とたたかいます。

 労働者はいつも弱い立場に置かれてきました。歴史上、多くの労働者が労働組合をつくろうとしただけで、人間らしい労働を要求しただけで、わずかばかりの賃金引き上げを求めただけで、経営者の不正を批判しただけで、差別され、解雇され、暴力を振るわれ、逮捕されてきたのです。命を奪われた労働者も数知れません。 
 長い闘いの歴史の上に、労働者の基本的権利が認められるようになってきました。たとえば、ILO(国際労働機関)の第87号条約は「結社の自由と団結権の保障」をうたい、多くの国がこの条約を批准しています。
 しかし、いまも労働者への弾圧は世界各地で続いています。例えば、南米のコロンビアは87号条約を批准しているにもかかわらず、国内で2001年だけで185人の労働組合員が殺されました(国際自由労連の2002年度報告書による)。同報告書には、カリ市営企業労働組合(SINTRAEMCALI)の次のような悲惨な事例が報告されています。

「…4月18日、日ごろから脅迫状を送られ、匿名の電話を受けてきた組合活動家エディソン・ゴメスの娘が大学に向かう途中に誘拐され、拷問を受けた。いくつかのNGOと内務省の保護委員会が介入し、6日後彼女は解放された。…5月19日組合員のフアン・エステバン・テノリオ・アラウホが殺された。5月21日には、組合の活動家の一人エリエセル・プラドが職場へ着いたところで殺し屋に11発の銃弾を浴びせられ、殺害された。そのたった4日後、別の活動家ヘンリー・ヒメネス・ロドリゲスは職場へ到着したときにバイクや車に乗った何者かに射殺された。」

 これは報告されている労働組合員を狙った殺人のほんの一部に過ぎません。
 組合活動を理由とした逮捕や投獄も各地で頻発しています。国際自由労連が抗議の手紙を送った最近の事例には次のようなものがあります。

  • 2003年5月中国遼安のフェロアロイ工場で、閉鎖に反対し4年間にわたる闘争を続けてきた52歳と57歳の労働者が国家転覆罪に問われて7年と4年の投獄判決を受けた。

  • 2003年4月、ジンバブエ労働総同盟の中部地区議長が目前に迫ったゼネスト支持のビラを撒いたことを理由に拘束された。西部地区の役員三人もビラ配布を理由に逮捕された。

  • 昨年、南アフリカの西ランド鉱山所有会社(ERPM)の警備員はストライキ中の労働者を銃撃し、2人の死者と14人の重傷者をだした。

 

7人の逮捕に巻き起こる国際的な抗議

 こうした労働組合の権利侵害、労働組合員の人権侵害に対しては、世界の労働組合が声を合わせて抗議をしてきました。そのような地道な努力の積み上げなくして労働組合と労働者を守ることができないからです。
 1月にブラジルで開かれた世界労働組合フォーラムで、JR総連が浦和電車区の7人の労働者への逮捕を報告しました。参加した世界の労働者から、不当な弾圧と闘うJR総連に対して暖かい激励が相次いだのです。
 そして3月には世界の交通運輸労働者を組織したグローバルユニオンの一つ、国際運輸労連(ITF)が書記長名で日本政府に対して抗議の手紙を送り、JR総連に全面的な支援を表明しました。
 日本政府・司法当局による7人の逮捕・労働組合権の侵害に対して、世界の労働組合から抗議が起きています。

2003年3月25日

全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)
委員長 小田 裕司 様

ITF書記長 デビッド・コックロフト

JR総連組合員7人の逮捕・勾留について

 組合員7人の逮捕・勾留に関する、2003年3月5日付の貴殿の書簡は、日本における基本的人権と労働組合権について深刻な懸念を抱かせるものです。別添文書は私が本日、小泉首相に送った抗議文です。ITFは、7人を釈放させ、組合や組合員を当局の介入から守る皆さんの取り組みを全面的に支援します。  本件に関する今後の新たな展開について、常にご連絡いただければ幸いです。

cc 交運労協、ITF東京事務所

2003年3月25日

小泉純一郎首相 殿

ITF書記長 デビッド・コックロフト

JR総連組合員7人の逮捕・勾留について

 国際運輸労連(ITF)は国際自由労連(ICFTU)と協力関係を持つ10の国際産別組織(GUF)の1つです。137カ国の621の交通運輸労組からなる連合体で、5百万人の労働者を代表しています。
 われわれは最近、ITFに加盟する全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)から、JR総連の加盟単組の組合員7人が職場で組合関係の活動をしたために11月1日に逮捕されたという憂慮すべき事実を知らされました。7人はその後、強要罪で起訴され、逮捕から約5カ月経った今も勾留されたままです。
 労働組合活動を行うことは通常の刑法上の制裁に免責を与えるものではありませんが、当局は労働組合活動自体を恣意的な逮捕や拘禁の口実として用いるべきではありません。労働者の利益を守る活動に関連した理由で7人の労組指導者・組合員を逮捕・勾留することは、市民の権利、特に労働組合権に対する重大な介入にあたる可能性があります。われわれは特に、起訴後も7人の釈放要請が再三拒否され、これほど長期間、弁護士以外との面会をほとんど許されていない点を懸念しています。また、逮捕に引き続き、警察が組合事務所など70カ所以上を捜索し、組合員名簿や組合の書類を押収したことも憂慮しています。このような行為は国際労働団体からみれば権力の乱用にあたります。
 われわれの懸念を払拭するために、本件を首相自身が詳しく調査され、7人を解放されるよう、強く要請します。

cc 小田JR総連委員長
   平澤交運労協議長

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